大阪高等裁判所 昭和25年(ラ)61号 決定
抗告人は、「原決定を取消し、相手方が昭和二十五年三月二十四日、兵庫県武庫郡御影町と神戸市との合併を決定した処分は、抗告人から相手方に対する、右処分の取消を求める本案判決確定に至るまで、その執行を停止する」との決定を求め、その理由として、原決定に民主主義を強調しながら、これに反する結論を出し、酷評すれば抗告人の主張の揚足取的な点がある。裁判所は大所高所より何人も納得する裁判をなすべきであるというにある。
抗告人の本件申立の原因とするところは、原決定の申立の原因とある部分に記載してあるからこれをこゝに引用する。
案ずるに、地方自治法第七十六条ないし第七十八条によると、議会解散請求は、その解散投票の結果、選挙権者の過半数の同意があつたとき、選挙管理委員会の投票の結果発表の日に、始めて議会は解散するものであり、一方同法第七条は、市町村の合併は、関係市町村の申請に基き、これを包括する都道府県議会議決を経て、その都道府県知事がこれを定めると規定するに止る。
これ等の規定を併せ考えて見ると、法は市町村の合併については、関係市町村の申請すなわち、その市町村の議会――この議会はもともと選挙権者の選挙に基いて成立したものであつて、平たく言えば当時の住民の総意によるものと見られ得べく、しかも解散請求手続中と雖も前示解散の効力の生ずるまでは、その有する権限を行使することのできるのはいうまでもない――の議決を経た市町村自身の申請あることをもつて足るものとし、それ以上これについて住民の直接の意思の表明を要請しないものと結論せざるを得ない。
して見ると、抗告人等の御影町議会の解散請求の手続中、相手方の同法第七条所定の手続を経てなした、本件合併決定は、何等違法の点のないものというべきである。
若し抗告人の見解の如しとせば、関係市町村の議会の解散請求の手続に着手するときは、――従つて、同法第七十八条所定の選挙権者の過半数の者が合併の議決をした議会の解散に同意するや否や未だ判明しない以前において既に、同法第七条の合併決定はできない結果となり、それはあたかも選挙権者の半数に達しない一部の者の意向によつて、前示のような手続を経てなされる合併決定を阻止できるというにひとしく、前示各法条に照し、殊に、抗告人自らも強調する、住民の総意に基き運営する、ことを根本の趣旨とする、地方自治の精神に鑑み、右抗告人の見解は、到底是認し難いところである。
抗告人の主張の失当なることは、以上の説明によつて明白であるから、右主張を前提とする本件執行停止の申立はこれを許すことができない。
これと結局同趣旨の原決定は正当であるから、本件抗告はその理由がない。
よつて民事訴訟法第四百十四条、第三百八十四条、第九十五条、第八十九条に従い、主文のとおり決定する。
(裁判官 大野美稲 熊野啓五郎 村上喜夫)